のど(喉)は、咽頭(口腔、鼻腔、食道上部)から喉頭(気管上部)までに当たる範囲を指します。のどは必要な酸素を取り入れて、二酸化炭素を排出する呼吸器官の働きをするだけでなく、食物を食道から胃に送り込む、声を出す(発声する)といった役割も兼ねています。このようにのどは、呼吸や食物を取り込むなど外部と接触しやすいことから、様々な症状が起きやすい器官でもあります。
以下のような症状があれば一度ご相談ください(例)
のどが痛む、のどに違和感を覚える、味がわかりにくい、咳や痰が出る、痰に血が混じっている、声がれしている、いびきがうるさい、食べ物などが飲み込みにくい など
逆流性食道炎
胃の中の内容物が何らかの原因で食道に逆流してしまうことで、食道の粘膜が障害を受けてしまい炎症が起きている状態を言います。
胃や十二指腸というのは、胃酸が分泌される場所でもあるので、これら粘膜が酸で傷つくことがないように特別にコーティングされている構造になっていますが、食道の粘膜は酸に耐えられる構造にはなっていません。そのため胃液や胃液を含んだ内容物が食道に逆流すると粘膜はダメージを受けてしまい、炎症(びらん状態)を起こすようになるのです。主な症状は、胸やけや胸痛、飲み込みにくい、吐き気、膨満感などで、このほか喘息などの呼吸器症状が出ることもあります。
通常であれば、胃と食道をつなぐ下部食道括約筋が働くことで逆流が起きないしくみになっているのですが、ここの筋が緩んでしまうことで発症するようになるのです。なお、緩みの原因は日頃の生活習慣によって起きることが多いとされ、多量の飲酒、脂肪分が多い食物を好んでよく食べる、肥満、カフェインの過剰摂取、喫煙、ストレスといったことが引き金となりやすいです。上記以外にも食道裂孔ヘルニア、胃を切除した手術後、血管拡張薬など薬剤の影響といったことでも緩むようになります。そのほか、原因が不明ということもあります。
気管支炎
気管支に炎症がある場合を気管支炎と言います。この場合、ウイルスや細菌に感染することで発症することがほとんどですが喫煙やアレルゲン(アレルギーとなる原因物質)に触れたことで起きることがあります。なお長期に渡って気管支炎が続いていると慢性気管支炎と診断されますが、この場合はよく喫煙者に見受けられます。発症することで、発熱、咳・痰、喘鳴(ゼイゼイと聞こえる呼吸音)などがみられるほか、食欲不振、全身倦怠感といった全身症状が現れることもあります。
気管支喘息
気管支がアレルギーなどによって炎症を起こし、それによる腫れによって気管支が狭窄するようになると呼吸がしづらくなるほか、この部位にわずかな刺激があっただけでも敏感に反応して、喘息発作がみられるようになります。これが気管支喘息です。この喘息は、上記のようにアレルギー(ハウスダスト、花粉、ダニ、カビ など)で起きるアトピー型だけでなく、風邪やインフルエンザ、喫煙、ストレスなどをきっかけに発症する非アトピー型もあります。
主な症状は、夜間から早朝にかけて起きやすいとされる、発作性の喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒューなどの呼吸音)、息切れ、咳き込む、痰といったもので、ひどくなると仰向けに寝るのが困難になって、座った状態でないと呼吸がしづらいケースもあります。なお一度咳が出始めてしまうと、なかなか止めることはできません。
喘息発作を治めたい場合は気管支拡張薬を使用していきます。また、気管支を日頃から炎症させないようにすることも大切で、この場合は吸入ステロイド薬も使用します。これは、少量のステロイド薬を専用の吸入器を使って口から吸入する治療法になります。
声帯ポリープ
喉頭の部分にある声帯の粘膜に腫瘤が発生している状態が声帯ポリープです。これは、声の酷使や咳を頻繁にする病気(風邪、逆流性食道炎 等)などによって、声帯の粘膜から出血するようになると血腫ができるようになるわけですが、これを繰り返すようになるとやがてポリープが形成されるようになるのです。
ポリープによって、声がかすれる(嗄声)、痰がからみやすい、のどの違和感(発声時も含む)、長時間話し続けることが難しいなどの症状がみられるようになります。発症初期に発見することができれば、声の安静に努め、炎症を抑える薬を使用するなどによって改善されることもあります。ただ、保存療法だけでは改善することは困難と医師が判断すれば切除のための手術療法が行われます。
咽頭炎
鼻腔や口腔の奥にある部位のことを咽頭と言い、ここには咽頭扁桃、口蓋垂、口蓋扁桃などがあるわけですが、何らかの原因で咽頭に炎症が起きている状態を咽頭炎と言います。なお咽頭炎は大きく急性咽頭炎、慢性咽頭炎、咽頭特殊感染症があります。
主な原因ですが、急性咽頭炎の場合はウイルスや細菌(インフルエンザウイルス、溶連菌 など)に感染することで発症します。慢性咽頭炎は、急性咽頭炎が長く続いている、あるいは喫煙や飲酒によって咽頭を持続的に刺激することで起きるようになります。咽頭特殊感染症は、特殊な病原体(クラミジア、梅毒トレポネーマ、結核菌、ジフテリア菌 など)に感染してしまうことで発症する咽頭炎になります。
よくみられる症状ですが、急性咽頭炎では、咽頭(のど)の痛み、発熱、倦怠感、頭痛、くしゃみ、鼻水、咳などが現れます。慢性咽頭炎の場合は、のどの不快感や異物感などがみられることから咳や咳払いなども起きやすくなります。なお、咽頭特殊感染症は上記の咽頭炎と同じような症状がみられるので、観察をしただけでは何の咽頭炎か診断するのは困難です。そのため、細菌検査や血液検査なども用いるなどして総合的に判断するようにします。
喉頭炎
喉ぼとけの付近にあって、気道と食道を束ねている部位を喉頭と言います。この粘膜に炎症が起きている状態を喉頭炎と言いますが、これは主に急性喉頭炎と慢性喉頭炎に分類されます。
急性喉頭炎は喉頭がウイルス(風邪)や細菌に感染することで発症することが大半ですが、そのほかにも声を酷使する、たばこの煙の刺激、アレルギーなどが原因となることもあります。よく見受けられる症状は、のどの痛みや異物感、声嗄れ、飲み込みにくさなどです。また症状がさらに悪化して、喉頭の腫れがひどい、喉頭蓋炎を併発していると、呼吸をするのが困難になることもあります。
また慢性喉頭炎は、急性喉頭炎を何度も繰り返している、胃食道逆流症や気管支炎などによる炎症の波及、副鼻腔炎によって発生した膿が鼻からのどに垂れるといったことが原因で発症します。急性喉頭炎と同様の症状が見られますが、原因が判明していれば、原疾患の治療などを行っていきます。
扁桃炎
のどの奥にある口蓋垂の左右に1個ずつ存在する口蓋扁桃と呼ばれる部位で炎症が起きている状態が扁桃炎です。急性と慢性があります。主な原因はウイルスや細菌による感染ですが、細菌の場合は大半が溶連菌とされ、それ以外だとアデノウイルスや淋菌、クラミジアなどが挙げられます。
急性扁桃炎は、これら細菌やウイルスに感染して発症することで、発熱、のどの痛み、嚥下痛(食物などを飲み込む際の痛み)、全身倦怠感、関節痛、首のリンパ節腫脹、食欲低下などがみられます。また、のどの奥を見れば、両脇が赤く腫れているのが確認できます。なお小児では、のどの激痛によって口からの栄養摂取が困難となって、脱水症状を引き起こすこともあるので要注意です。
なお慢性扁桃炎も細菌やウイルスに感染して発症するほか、喫煙や飲酒などによる刺激が引き金となって起きることもあります。一口に慢性扁桃炎と言いましても持続的にのどの痛みや乾燥した感覚、違和感などを覚える慢性単純性扁桃炎、急性扁桃炎を年に3~4回程度繰り返す習慣性扁桃炎、扁桃にはこれといった症状がみられない(あってものどの軽い痛みや違和感程度)ものの、扁桃が起点となって皮膚、関節、腎臓といった部位で様々な症状が現れる扁桃病巣感染症に分けられます。抗菌薬の治療では改善しない、何度も扁桃炎を繰り返しているという場合は扁桃腺を切除する手術が行われます。
扁桃周囲膿瘍
急性扁桃炎が口蓋扁桃だけでなく、その周囲にも炎症が起きるようになると扁桃周囲炎と診断され、それがさらに膿瘍、いわゆる膿の塊になっている場合を扁桃周囲膿瘍と言います。このような状態になると、のどの腫れと激痛によって口が開きにくくなって、つばを飲み込むことすら痛くて困難となります。このほかにも発熱や口臭、あまりの痛さから飲食すらできなくなって脱水症状が現れてしまうこともありますので要注意です。あまりにもひどいと、膿瘍が大きくなって呼吸をするのも苦しいということもあります。
口蓋扁桃肥大
文字通り口蓋扁桃が肥大化している状態を言います。口蓋扁桃は3歳頃から大きくなって、7歳頃に最大となって、その後は成長するに従って徐々に小さくなっていきます。口蓋扁桃肥大によって様々な症状がみられるようになりますが、軽度の場合は自覚症状がみられることはありません。ただ口蓋扁桃が大きくなっていくと、いびきをかく、睡眠時無呼吸症候群を引き起こすといった症状や呼吸障害、食べ物を飲み込むのに時間がかかるなどの障害が起きるようになります。肥大化したことで、症状の程度が強く出るという場合は、口蓋扁桃の摘出手術が行われるようになります。
アデノイド肥大
アデノイドとは、鼻の奥の突き当たった部分にある上咽頭のリンパ組織の塊のことを言います。この塊は2歳頃からだんだん大きくなっていき、6歳頃をピークに最大化していきます。その後は成長するに従って小さくなっていき、10歳を過ぎる頃には目立たなくなります。アデノイドが肥大化することで現れやすい症状が、鼻づまり、口呼吸、鼻声、いびきや睡眠時無呼吸症候群などです。肥大化してもこれといった症状がなければ経過観察となりますが、上記の症状によって呼吸障害や睡眠障害が起きているという場合は、アデノイドを切除する手術療法が検討されます。
味覚障害
食事をしているのに味が全然わからない、味の感覚が鈍っている、食べている物が本来の味とは違う味になっている。このような症状があれば、味覚障害が考えられます。原因としては、加齢やシェーングレン症候群による唾液腺の低下、亜鉛の不足、降圧剤や抗生物質などの薬剤の使用による影響、特発性(原因不明)や心因性といったことが考えられ、鉄欠乏性貧血による舌炎や口内炎なども味覚障害になりやすいです。また、新型コロナウイルスに感染した患者様に嗅覚・味覚障害がよくみられるとされていますが、風邪やインフルエンザを発症することで、上記のような症状が出ることもあります。そのため必ずしも新型コロナウイルスによるものとは限りません。
よくみられる症状は、先にも触れましたが、味覚(甘味、酸味、塩味、苦味、旨味など)の低下、何を食べても味を感じないといったものですが、その他にも飲食をしているわけでもないのに塩味や苦味を感じる、何を食べてもまずく感じてしまうということがあります。